次なるシリコンバレーを目指す世界のエコシステムに捧げる物語:最終話「日本がシリコンバレーから学べること」

June 20, 2016

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ここ数週間にわたって、シリコンバレーの歴史と、シリコンバレーのモデルを他の場所でも再現しようしてきた試みを振り返った。

私は、シリコンバレーをまねようとすることは無意味であると書いたが、日本の政府やビジネス界は、シリコンバレーを成功に導いたさまざまな要素から インスピレーションを得ることはできるだろう。イノベーション・クラスターの構築に成功を見出した地域では、人々は自分たちの流儀とユニークな強みを貫 き、政府は失敗を罰することなく邪魔をしない環境を整えている。うまくやっている事例として、まず頭に浮かぶのはニューヨーク市だ。しばらく前に会った ニューヨークを拠点とするイノベーターは、ニューヨークがシリコンアレーという名前を捨てたときから、同市の起業エコシステムが本格的に立ち上がり始めた と指摘した。

では、日本がシリコンバレーのモデルから得られるインスピレーションは何か?

これは、2つの理由から回答が難しい質問だ。第一に、シリコンバレーを成功に導いた要素をすべて把握できる人は存在しない。そこにあるのは、ある程度のチャンスと、極めて難しいシリコンバレーをコピーしようとする試みが作り出す認知的不協和だ。

そして第二に、シリコンバレーを成功に導いた主因の一つだが、異常な野心を持った人々が極めて多い環境は、他の地域に容易に輸出できる要素ではな い。LinkedIn プロフィールの分析によると、シリコンバレーの住民は、世界のどの地域よりも大きな夢を描いているようだ。LinkedIn プロフィールに「change the world(世界を変える)」というキーワードを入れている人の多さは、世界のどこよりもサンフランシスコ・ベイエリアが際立っている(出典:Venture Capital Dispatch)。

おそらく、より具合の良い質問はこうだ。「私たちの都市にも転用可能な、シリコンバレーのシークレット・ソースの成分とは何か?」

私には、注意して考えるべき、日本にも当てはまるであろう2つの要素が思い浮かぶ。それは、1. 近接と 2. 移民だ。

近接

ここで私が言わんとするのは、教育機関、ビジネスを営む企業、デザインコミュニティが近接していることだ。これらの多様なグループが近接しているこ とは重要で、なぜなら、多くの分野にわたる専門知識を持った人が集まるとき、イノベーションを起こすセレンディピティな出会いの可能性が著しく高まるから だ。フェアチャイルド・セミコンダクターの設立に関わった「8人の反逆者」のうち、最もよく知られる Robert Noyce と Gordon Moore の2人は、そのすぐ近くにインテルを設立した。メンロパークからさほど遠くない場所で、Eugene Kleiner の名で知られるフェアチャイルド三番目の創業メンバーは、パロアルトの近くで HP を退職した Tom Perkins と意気投合し、世界で最も高名なベンチャーキャピタルファンドを生み出した(KPCB)。

より最近の事例で、間違いなく歴史上最も成功した起業努力の一つは、パロアルトのスタンフォード大学で Sergey Brin と Larry Page が出会ったことによる Google の誕生だろう。スタンフォード大学や UC バークレーのような組織が近くにあったことで、Google にとっては、同社が成長する上で、腕のいいエンジニアやマネージャーの採用を容易にした。その一人がスタンフォード大学を卒業した Marissa Mayer で、彼女は Google のホームページを華麗にシンプルなデザインに変えた人物だ。

このデザインの要素は、特に今日のイノベーションにおいて侮れない部分だ。オープンソースコード、クラウドインフラ、HTML のようなオープンスタンダードの急増ににより、新しいハイテクを作り出すことは、かなりやりやすくなった。プロダクトやサービスのイノベーションは、基礎 技術の複雑さではなく、ユーザエクスペリエンスの中にある。デザイン、あるいは、より進化した形の創造的知性が、ユーザエクスペリエンスの核を作り出し、 シリコンバレーは常に、アーティスト、デザイナー、クリエイティブを作り出す人にあふれている。

移民

わかりにくいかもしれないが、移民も近接と同じく重要な要素の一つだ。電子フロンティア財団(EFF)のディレクター Brad Templeton が、フォーブス誌に「The Real Secret Behind Silicon Valley’s Success(仮訳:シリコンバレーの成功の裏にある、本当の秘密)」という素晴らしい寄稿を している。その中で、彼は1990年代後半の PC やインターネットのエグゼクティブ向けのハイエンド・カンファレンスで思いついたことを紹介している。ハイテク企業の創業者やエグゼクティブが集まるカン ファレンス会場で、あるスピーカーが移民について話したいと述べた。「アメリカ国外で生まれた人は起立してほしい」と聴衆に尋ねたところ、実に半分以上の 人々が立ち上がった。

デューク大学の研究者グループはある報告書の中で、移民が創業した企業が2005年には45万件を超える仕事を生み出し、アメリカのスタートアップ創業者の52%が移民であると結論付けた。彼らの多くは以前いた場所での生活をあきらめ、起業の夢に邁進しようとシリコンバレーにやってきた人々だ。

意識を起業へと向かわせる移民の DNA の中には何かがある。それはおそらく、新しい冒険に対して恐怖を抱かず、社会の片隅で生きる能力であり、社会規範や従来からの考えにとらわれず、何かを始 める時の一か八かのプレッシャーに負けない強さ、あるいは、これらの要素の組み合わせによるものだろう。

さて、ここから日本が学べるものは何か?

その一つとして、外国人が日本への血縁や由来の有無にかかわらず、才能ある起業家の誕生を妨げない、移民受け入れの政策立案を提案したい。最近、発表されたスタートアップビザのしくみは正しい方向へと進む第一歩であり、このことについて、私は日本政府に拍手を送りたい。ここで最も難しいのは、不正な入国滞在を防ぎつつ、起業家がビジネスを立ち上げるのに必要な滞在日数をどの程度与えるかという、バランスの取りどころだろう。

さらにもう一つ学べるのは、近接することによる人々の相互引力の重要性だ。私は東京のさまざまなイノベーションハブが、オーガニックなクリエイティ ビティというよりは、不動産デベロッパーらによって運営されている印象を持っている(三菱地所による新丸の内ビル、森ビルによる六本木・赤坂、東急による 渋谷エリアなど)。

日本が持つ最上級の交通インフラは人々の距離を縮めたが、クリエイティビティを生み出す上で、人々の出会いがもたらすことの重要性を過小評価してはいけない。

私は、日本の急成長するスタートアップ・エコシステムで日々出会う起業家に感心しており、この国で投資を始めることに興奮している。

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posted in venture capital by mark bivens

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