私は、Web3が、Uber、Lyft、Airbnb、Upwork、Taskrabbit、Fiverrなどのようなギグエコノミー・ビジネスをどのように変えることができるのか、そしてこれらの活動にトークンエコノミクスを適用することは合理的のか、ずっと考えてきた。
この1週間での2つの出会いによって、分散型モデルが、これらの既存プラットフォームの欠点のいくつかに対処できることを確信した。
一つ目は、世界最新のWeb3配車サービスプロジェクトのファウンダーとの出会いである。もう一つは、「抵抗の軌跡の拡大:ギグ・エコノミーにおける支配と抵抗の共構成を理解する(Expanding the Locus of Resistance: Understanding the Co-constitution of Control and Resistance in the Gig Economy)」という、ケロッグ経営大学院で経営と組織を教えるハティム・ラーマン助教授とウォートン・スクールのリンジー・キャメロン教授が発表したギグエコノミーにおける支配と抵抗のバランスを理解するための研究論文である。
ラーマンとキャメロンは、こうしたギグエコノミー・プラットフォームの顧客による5つ星評価システムが破綻していることを指摘している。彼らは、顧客による評価システムが過度に重要視され、ギグワーカーは本質的に「デジタル上司」に従わざるを得ず、評価が確定し公表されると、労働者はほとんど救済を求めることができないと主張する。これに対し、顧客は、ギグワーカーに比べ、ネガティブなレビューの効果を実感することはない。
その結果、ギグワーカーはこうした支配に抵抗する方法を考える。例えば、仕事を受ける前に顧客の行動や前評判を慎重に吟味する、高い評価を引き出すために仕事が始まったら割引をする、あるいはネガティブなレビューを避けるために仕事が完了する前にキャンセルする、といった方法が考えられる。
現在のWeb2の評価システムは、ギグワーカーのビジネスと利害関係のない人々に権限を委譲している。
分散化は、このようなプラットフォームのギグワーカーと顧客の利害関係を改善することができる一つの方法だと考える。
オンデマンドの配車サービスに注目してみると、このコンセプトが革新的でないことに異論はないだろうが、UberやLyftのようなビジネスは持続的な収益性を確保できてはいない。ドライバーの地位が独立したコントラクターではなく従業員であるとみなされるため、プラットフォームは実質的なベネフィットを提供する必要があり、このモデルの経済性は崩壊したのである。しかし、このような規制があるにもかかわらず、ドライバーは、稼ぎを最大化するためにすべてのアプリを常にアクティブにし、単一のプラットフォームに対するロイヤリティを下げながら、生活を維持するために奮闘している。
これらの分散型配車サービスプロジェクトのテーゼは、トークンエコノミクスが壊れたモデルを修復するというものである。具体的なトークノミクスに関する実験はまだ行われ、新しいモデルを検証しているようであるが、私が理解できるところでは、ドライバーとライダーの両方が、サービスを利用する際にプラットフォーム固有のトークンを獲得することになる。トークンの付与は、利用頻度と総利用期間の両方に報いるように構成することで、ドライバーとライダーの両方からのロイヤリティを得ることができる。例えば、プラットフォームで運転する権利がNFTに組み込まれている場合、この権利は譲渡可能で、かつてのタクシーメダリオンのように価値を高めることができる。
もちろん、このようなモデルの実現には、細部まで検証する必要がある。しかし、分散化は、ビジネスのエコノミックモデルに新しい観点をもたらし、再び実現可能なものにする可能性がある。
日本ではまだWeb3をキャッチアップしていないとはいえ、最新の流行としては、ややWeb3の人気が落ちている時期である。私の経験では、あるイノベーションにスポットライトが当たらなくなったときこそ、その変革の可能性を研究・考察する絶好の機会であることが多い。