フランスは、世界で最も活気のあるスタートアップのエコシステムを維持するという野心を縮小させる気配はない。先週パリで開催された VivaTech カンファレンスで、フランスのマクロン大統領は、TIBI の延長を発表した。このイニシアチブは、金融機関のパートナーに60億米ドルを VC 資金に振り向けるよう促すことによって、3年間でフランスのスタートアップに300億米ドルの資金を供給することに成功した。
金融機関がアンカー LP として VC ファンドを支援すると、好循環の乗数効果が発生し、VC ファンドは他の LP からより多くの資金を調達することができるようになる。TIBI の延長により、このような政府系パートナー機関からフランスの VC ファンドに、特にアーリーステージのベンチャーファンドに重点を置く形で、さらに70億ドルの資金が供給される予定だ。
偶然なのか、それとも直接のインスピレーションなのか、ゆうちょ銀行は今日、「スタートアップをユニコーンにする」ための同レベルの資金提供を日本で発表したばかりだ。そこで、フランスがどのようにして36のユニコーンを生み出したのか、検証する好機だと思う。
フランスから生まれたユニコーンは36社
20年近くにわたる献身的な努力により、フランスはヨーロッパにおけるスタートアップの主要なエコシステムとして台頭し、いくつかの指標ではアメリカ、中国に次ぐ世界第3位であることは間違いない。数年前、フランス政府は、2025年までに25社のテックユニコーンを輩出するという目標を打ち出した。フランスはすでにこの目標を打ち破り、36社のユニコーンを輩出している。
ユニコーン数は、世界中の政府が国内のスタートアップエコシステムの活況を表す代理指標として好んで使用するものだ。ここでは、フランスがどのようにして36社のユニコーンを輩出したのか、その事例を紹介する。
テックユニコーンの育成に成功した要因として、主に以下の3つが挙げられる。
- シードステージのスタートアップの多さ
- 時間
- 資本金
上ののファネル図が示すように、ユニコーンを生み出すには、シードステージのスタートアップの豊富なプールから始める必要がある。当たり前といえば当たり前だが、ほとんどのスタートアップはユニコーンになれない。フランスの場合、1つのユニコーンを生み出すには、約1,000のシードステージのスタートアップが必要である。十分な数のシードステージのスタートアップを育てられないと、ユニコーンの成長には根本的な手かせ足かせがかかってしまう。
第二に、時間がかかることである。ユニコーンは一朝一夕には成長しない。フランスでは、スタートアップがシードステージからユニコーンステージに成長するまでの平均時間は8年である。
最後に、資本が必要だ。20年前、フランスは VC というアセットクラスに興味を持つリスクキャピタルが豊富な国ではなかった。また、スタートアップの国でもなかった。資本の供給源は保守的な考え方で、フランス社会は若者に起業よりも安定した職業を勧める文化がありた。そこで、フランス政府は、スタートアップへの資金流入を促進し、時間をかけてフランス社会の起業家精神に変化をもたらす政策変更、エンジェル税制を実施した。
17年間にわたり、フランスのエンジェル税制は、ユニコーンファネルに必要なシードステージのスタートアップ35,000社の大部分を生み出した。その後、BPI(フランス公共投資銀行)、そして最近では前述の TIBI のイニシアチブにより、VC ファンドは、ユニコーンファネルを通過するスタートアップの継続的な成長に必要な資金を調達するために、自己資金を満たすことができるよう、さらなる後押しをした。
フランスのスタートアップエコシステムの軌跡は、立派なサクセスストーリーである。しかも、フランス政府は、その成功に甘んじることなく、野心を抑えている。フランスは、今後も注目すべきモデルであり続けるだろう。